Caballero-Vidal, G., Bouysset, C., Grunig, H. et al. Machine learning decodes chemical features to identify novel agonists of a moth odorant receptor. Sci Rep 10, 1655 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-58564-9

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Abstract

嗅球で発現する嗅覚受容体は、匂い知覚の鍵となるタンパク質です。それらは特定の匂い物質群に応答しますが、それらがどのような物質に応答するのかの知見は限られたままです。これまでに、機械学習をもとにした「バーチャルスクリーニング」では、既知のリガンドの化学的特徴を使用して、哺乳類と昆虫の両方を対象に受容体の新しいリガンドを予測が試みられてきました。昆虫のアプローチは双翅目にまだ限られていますが、昆虫の匂い受容体は種間で非常に異なることが知られています。ここでは、対象を鱗翅目受容体であるSpodoptera littoralis幼虫のSlitOR25における誘因性の匂い物質受容を予測させます。 300万分子のバーチャルスクリーニングにより、SlitOR25で体系的にテストされた32の購入可能な分子が絞り込まれ、11の新規アゴニスト(成功率28%)が明らかになりました。サポートベクターマシンが新規アゴニスト予測に貢献し、鱗翅目ORの化学空間を拡大しました。さらに、アゴニストの化学構造を比較することで、化合物構造と機能の相関解析を可能になります。実証は、生物的防除のコンテキストで嗅覚行動を変更できるORアゴニストまたはアンタゴニストの同定を最終的に可能にする可能性があります。

Memo

  • ケミカルスペースとは何か → スペースとはここでは情報空間であり、ケミカルの情報は本来であれば、様々な情報化が可能であるが、ここではリガンド化合物(匂い物質)の構造の特徴記述子である。
  • サポートベクターマシン → 分類(クラス分け)に用いられる統計的手法で、分類予測を構築する(機械学習の)一手法
  • 新規アゴニストとは?既存の類似化合物との類似性の評価方法?何が心に期待されるケミカルスペースの拡大なのか? → ファーマコフォアへの言及がある通り、「これまでと類似していない化合物を見つけること」が「リガンドのケミカルスペースの拡大」に貢献する。
  • 昆虫の嗅覚受容体のCryo-EMは昆虫の嗅覚受容体が4量体構造である論拠になっている。これを元にMD等を合わせて考察することで香気分子に対する選択性を評価できる可能性がある。今回、昆虫ORがヘテロマーであることには言及をされているが、それを考慮したMLとはなっていない。
  • ORCOのアゴニスト探索にも言及されているが、それは意味のあるものではない
Methods
  • Knime v3.2.1  → データ処理のための自動化ソフトウェア。各種機械学習ハンドリングも可能
  • chemical descriptors were computed with Dragon v6.0.40  → 化合物の構造をもとに記述子化を行うソフトウェア(特にリガンドなど低分子化合物に有効)
  • LibSVM v2.89 (35). → SVMパッケージと思われる