Abstract
嗅覚受容体(OR)遺伝子は、嗅覚の分子基盤を構成し、哺乳類のゲノムにおける最大の遺伝子ファミリーとなっています。以前の研究では、OR遺伝子ファミリーの偽遺伝子の割合は、他の類人猿よりもヒトのほうがはるかに大きく、類人猿はマウスよりもはるかに大きいことが示唆されています。霊長類における嗅覚レパートリーの変容の過程を調査するために、各種から100個のOR遺伝子のランダムに選択されたサブセットを調査することにより、19種の霊長類におけるOR偽遺伝子の割合を推定しました。類人猿、旧世界サルと1つの新世界サル、ホエザルのOR偽遺伝子の割合は、他の新世界サルやキツネザル(原猿)よりもかなり高いことがわかりました。驚くべきことに、旧世界サルや類人猿と並んで、ホエザルは完全な三色性ビジョンを持つ唯一の新世界のサルでもあります。私たちの調査結果は、嗅覚レパートリーの悪化が霊長類の完全な三色の色覚の獲得と同時に起こったことを示唆しています。
Memo
和文の参考
Newcomb, R.D., Xia, M.B. & Reed, D.R. Heritable differences in chemosensory ability among humans. Flavour 1, 9 (2012). https://doi.org/10.1186/2044-7248-1-9 における「機能しないと予測される遺伝子600個を合わせると、人間の嗅覚受容体遺伝子数はマウスやイヌ波並みの嗅覚受容体遺伝子数(約1000)に達します[98、99]。機能するニオイ受容体が400個しかない場合でも、人間は何十万もの異なるニオイを識別できると考えられています。人間と他の霊長類は、視覚が支配的になり始めたとき、三色視覚の発達中に嗅覚受容体の偽遺伝子化が起こったとする仮説があります[100]。」における[100]
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