Gemmell, N.J., Rutherford, K., Prost, S. et al. The tuatara genome reveals ancient features of amniote evolution. Nature (2020).

Doi.org


概要

  • トゥアタラはマオリ文化において特別な場所の守護者であるとされています2(本研究はマオリ族のiwi(部族)であるNgātiwaiと協力して、そのゲノムのシーケンスを行いました)
  • トゥアタラは、生息地の喪失、捕食、病気、地球温暖化などの要因により、絶滅の危機に瀕している種とされています2。
  • トゥアタラは、形態学的および生理学的なさまざまな生物種の特徴を併せ持っており、また温度依存性の性別変化、非常に低い基礎代謝率、かなりの寿命といった爬虫類としては独特の形態があります2。
  • 分類学的位置は発見以来確定しなかった2ものの、分子的アプローチがこの分類のために試みられている4が、有蹄動物(トカゲとヘビ)を形成する系統からのトゥアタラの分割のタイミング、トゥアタラの進化の速度、およびトゥアタラの種の数は、現在も議論の余地がある2。

トゥアタラの分類学的特徴が特徴的であるように遺伝子に複数の他の動物には見られない特徴がありました。今回、WGSをもとに以下の特徴を説明できる遺伝的候補が報告されます。(詳細は本文にて確認のこと。)

  • 免疫(MHC)
  • 視覚オプシン関連
  • 熱調節(TRPV;熱感受性たんぱく質)
  • セレン代謝
  • 匂いの受容

Memo

Newcombはゲノム情報をもとにした研究、その中でも嗅覚受容体の研究を精力的に報告している。古代生物についての研究もあり、個人的に関心を持っている。

今回、統計的なサンプルサイズの事前決定はされておらず、実験は無作為化されていない。リファレンスゲノムということではなさそう。希少種なので仕方がないような気がする。

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気相・凝縮系における反応ダイナミクスの理論研究, 森 俊文, Mol. Sci. 13, A0106 (2019)

jst.go.jp


前提

「凝縮系には、フェムト秒(10-15秒)という非常に速い時間スケールの分子振動から、マイクロ秒(10-6秒)からミリ秒(10-3秒)そしてさらに遅い時間スケールの分子の集団的な運動やタンパク質の構造変化が存在します。*

ここでは気相中での光異性化反応と,凝縮系でのタンパク質フォールディングおよび酵素反応に関する研究成果を紹介されている。

続きを読む 気相・凝縮系における反応ダイナミクスの理論研究, 森 俊文, Mol. Sci. 13, A0106 (2019)

Estimation of binding free energies with Monte Carlo atomistic simulations and enhanced sampling, JF Gilabert Navarro – 2020(博士論文) -3

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「1.3.2タンパク質-リガンド結合」のまとめ

相互作用モデルの歴史

タンパク質-リガンド相互作用発生によりタンパク質の機能が実現している。

  • 剛性の仮定
  • ロックアンドキーモデル(Fischer、1894)
  • 誘導適合(Koshland、1958)
  • 立体配座選択モデル(Frauenfelder et al.、1991; Tsai et al.、1999)暫定的な複合体が形成され、タンパク質構造(およびリガンド)の変化が誘発
  • コンフォメーションセレクション ; ポピュレーションセレクション、ゆらぎフィット、選択フィット

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Estimation of binding free energies with Monte Carlo atomistic simulations and enhanced sampling, JF Gilabert Navarro – 2020(博士論文) -2

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1.1 Motivationに関するメモ

今回の論文では

  • Classical fluid → Gibbs Energy (G)とconformation set → MSM model → Gibbs Energy (G)を統合すような自由エネルギー概念については触れられていない
  • 粗視化MDについての言及がほしい。
  • 理想的に無限サンプリングを行うと分子間親和力が計算可能、についての理論背景(遷移確率行列、反応速度論行列)についての言及がほしい。
    今回の話はPELE, Adaptive PELEについての話に比重が置かれている。序論でのまとめを整理して次につなげる。

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The draft genome of the specialist flea beetle Altica viridicyanea (Coleoptera: Chrysomelidae) provides insight into host plant specialization, HJ Xue, YW Niu, KA Segraves, RE Nie, YJ Hao… – 2020

article

Memo

生態学的種分化中に発生する分子進化プロセスへの関心

  • 昆虫のOR, GRなどの化学刺激受容体の進化と餌の嗜好性の関連性が多く調べられている。今回もドラフトゲノムの作成と合わせて「食性種の宿主植物の特殊化への洞察を提供するために、化学感作、植物二次化学の解毒、および植物細胞壁分解に関与する主要な遺伝子ファミリー」が特定されている。一般に、化学感覚遺伝子の含有量と宿主の特異性が、植物食性カブトムシにおいて相関するはずであるという仮説を(今回のドラフトゲノムでも)支持している[52]。
  • 報告されているのは、化学物質の検出に関与する少なくとも5つの遺伝子ファミリーがあり、3つの受容体ファミリー、嗅覚受容体(OR)、味覚受容体(GR)およびイオンチャネル型受容体(IR)、および2つのタンパク質結合ファミリーであるにおい結合タンパク質(OBP)および化学感覚タンパク質(CSP)。
    →OBPについても報告されるようになってきた。OBPの役割についての決定的な論拠はないので興味がもたれる。

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Estimation of binding free energies with Monte Carlo atomistic simulations and enhanced sampling, JF Gilabert Navarro – 2020(博士論文)

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Memo

本文未読。ちょっと新規性については読み込めていない。

結合親和性の予測に存在する2つの大きい問題

  • 不十分なサンプリング ← 今回言及するのはこのうちの「タンパク質-リガンド結合自由エネルギーの推定」のためのサンプリング
  • 不正確なモデル

提案された「タンパク質-リガンド結合自由エネルギーの推定」のための効率的な方法 ※実態は本文を確認する必要がある

  • exploratory enhanced sampling simulation (探索的拡張サンプリングシミュレーション);結合したコンフォメーションから結合していないポーズにかけて、部分的に偏った高度なサンプリングをもとにシミュレーション
  • longer unbiased simulations ;モジュールから呼び出される非バイアスの長時間シュミレーション。PELE、分子動力学、AdaptivePELE。

exploratory enhanced sampling simulationの価値

  • 本手法は限られた範囲のタンパク質システムの検討に貢献できる
  • 通常の公平なシミュレーションは効率的ではない
  • 他の多くのシステムで適用できる、より洗練された、拡張されたサンプリング方法が必要である

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On the advantages of exploiting memory in Markov state models for biomolecular dynamics, S Cao, A Montoya-Castillo, W Wang, TE Markland… – The Journal of Chemical …, 2020 –2

memo

前回の続き。

分子系のダイナミクスは、高次元の位相空間で定義されるLiouville方程式に従います。ただし、タンパク質の立体構造ダイナミクスの場合、対象となる動的モードは低次元の多様体にあることが多く、タンパク質の立体構造変化の遅いダイナミクスを説明するには、いくつかの集合変数で十分です。これらのモードのダイナミクスを研究するために、すべての分子運動を表す位相空間よりもはるかに低い次元空間に存在する、それらの運動方程式を構築できます。

Liouville方程式

ハミルトン力学におけるリウヴィルの定理(英: Liouville's theorem)とは、確率分布がどのように時間発展するかを予言する定理であり、フランスのジョゼフ・リウヴィル(リュービル、リウヴィユ)によって発見された。

典型的に、$τ$ が位置と運動量の座標を表すとして、$ρ$ は系が相空間の微小体積 $dτ$ 中に見つかる確率である。$τ$ は $N$ 個の粒子の系において、変数の組を表すのに便利な簡潔的表現である。

$$ x_{1},x_{2},\ldots ,x_{N},y_{1},y_{2},\ldots ,y_{N},z_{1},z_{2},\ldots ,z_{N};p_{x1},p_{x2},\ldots ,p_{xN},\ldots ,p_{zN} $$

リウヴィルの定理によると、ハミルトニアン H と分布関数 ρ を持つ系で

$$ \frac{\partial}{\partial t}\rho=-{\,\rho ,H\,} $$

が成り立つ。ここで中括弧はポアソン括弧を表す。これをリウヴィル方程式と呼ぶ。

リウヴィルの定理 (物理学)

マスター方程式 master equation (統計熱力学)

$n$個の状態 1 , 2 , … , n の間を $a_{lm}=a_{ml}$( $l\leftrightarrow m$状態間の遷移確率)の割合で移り変わる系を考える。この系が状態$l$をとる確率 $P_{l}(t)$ の時間変化は次のマスター方程式(マスターほうていしき、英: master equation)で記述される。

$$ {\frac {dP_{l}(t)}{dt}}=-\sum {m}a{lm}P_{l}(t)+\sum {m}a{ml}P_{m}(t) $$

マスター方程式

森-Zwanzigの射影演算子法55—60

「Mori–Zwanzig (MZ) 射影演算子法[7]に基づき,MD のトラジェクトリから直接粗視化力場を構築する…MZ法は多自由度系から興味のある自由度を峻別し、残りの自由度を消去するための手法である。」最近の研究から「Mori–Zwanzig射影演算子法及び iterative Boltzmann inversion法に基づく非マルコフ粗視化モデルの構築」(吉本)

(もう少し適切な日本語の紹介記事がないか継続して探してみる)

メモリカーネル

線形非平衡統計力学の一般論に基づき、粗視化・自由度削減した運動方程式として次式のような一般化Langevin 方程式[6,7] が採用されることが多い。

$$ \frac{\text{d}Q_{j}(t)}{\text{d}y}=\int_{-∞}^{t} dt'\sum_k K_{jk}(t-t')\times\frac{\partial F(\left\{ Q_{j}(t') \right\})}{\partial Q_{k}(t')}+\xi_{j}(t) $$

ここで、$K_{jk}(t)$ はメモリカーネルと呼ばれる時間遅れをともなった摩擦の効果を表す量、$\xi_{j}(t)$ はランダムな熱ゆらぎによるノイズを表す。右辺第1 項は自由エネルギーを減少させる方向へと自由度を駆動するものであり、自由エネルギーを減少させる力と抵抗力に相当する(散逸と呼ばれる) 。

「ノンマルコフな(non-Markovian)軌道解析法」

分子内の反応(化学反応や構造変化を含む)のレートを計算する場合…パス空間を正しくサンプルするのは諦め,ある限定されたオーダーパラメータ空間(これをどう選ぶかに関しては後で触れる)でのダイナミクスを記述することを考える.まず,その空間をボロノイ分割などを使って適当に区切り2,区切られた区間内を「ミクロな状態」と考える.そのミクロな状態間の遷移を素過程と考え,それをつなげることである状態AからBまでのレートを算出するわけである.この考え自体はMSMと同じであるが,マルコフ性を仮定しないので,よりflexibleなスキームとなりうる.この手法のことを便宜的に,ノンマルコフな軌道解析法(non-Markoviantrajectory analysis)と呼ぶ。(分子系における遷移・反応レートの計算法についてIII(藤崎) )

※マルコフ性(マルコフせい、英: Markov property)とは…その過程の将来状態の条件付き確率分布が、現在状態のみに依存し、過去のいかなる状態にも依存しない特性を持つことをいう。…マルコフ性のある確率過程をマルコフ過程と呼ぶ。 (マルコフ性 )

qMSMアルゴリズム

(再度読み直す必要がある) 図1;qMSMの実装。メモリカーネルの計算と長時間スケールダイナミクスの予測の2つのステップで構成されています。…MDシミュレーションで計算されるため、TPM自体のダイナミクスからメモリカーネルを計算する簡単な方法を示します。

(たぶん続く)