On the advantages of exploiting memory in Markov state models for biomolecular dynamics, S Cao, A Montoya-Castillo, W Wang, TE Markland… – The Journal of Chemical …, 2020 –2

memo

前回の続き。

分子系のダイナミクスは、高次元の位相空間で定義されるLiouville方程式に従います。ただし、タンパク質の立体構造ダイナミクスの場合、対象となる動的モードは低次元の多様体にあることが多く、タンパク質の立体構造変化の遅いダイナミクスを説明するには、いくつかの集合変数で十分です。これらのモードのダイナミクスを研究するために、すべての分子運動を表す位相空間よりもはるかに低い次元空間に存在する、それらの運動方程式を構築できます。

Liouville方程式

ハミルトン力学におけるリウヴィルの定理(英: Liouville's theorem)とは、確率分布がどのように時間発展するかを予言する定理であり、フランスのジョゼフ・リウヴィル(リュービル、リウヴィユ)によって発見された。

典型的に、$τ$ が位置と運動量の座標を表すとして、$ρ$ は系が相空間の微小体積 $dτ$ 中に見つかる確率である。$τ$ は $N$ 個の粒子の系において、変数の組を表すのに便利な簡潔的表現である。

$$ x_{1},x_{2},\ldots ,x_{N},y_{1},y_{2},\ldots ,y_{N},z_{1},z_{2},\ldots ,z_{N};p_{x1},p_{x2},\ldots ,p_{xN},\ldots ,p_{zN} $$

リウヴィルの定理によると、ハミルトニアン H と分布関数 ρ を持つ系で

$$ \frac{\partial}{\partial t}\rho=-{\,\rho ,H\,} $$

が成り立つ。ここで中括弧はポアソン括弧を表す。これをリウヴィル方程式と呼ぶ。

リウヴィルの定理 (物理学)

マスター方程式 master equation (統計熱力学)

$n$個の状態 1 , 2 , … , n の間を $a_{lm}=a_{ml}$( $l\leftrightarrow m$状態間の遷移確率)の割合で移り変わる系を考える。この系が状態$l$をとる確率 $P_{l}(t)$ の時間変化は次のマスター方程式(マスターほうていしき、英: master equation)で記述される。

$$ {\frac {dP_{l}(t)}{dt}}=-\sum {m}a{lm}P_{l}(t)+\sum {m}a{ml}P_{m}(t) $$

マスター方程式

森-Zwanzigの射影演算子法55—60

「Mori–Zwanzig (MZ) 射影演算子法[7]に基づき,MD のトラジェクトリから直接粗視化力場を構築する…MZ法は多自由度系から興味のある自由度を峻別し、残りの自由度を消去するための手法である。」最近の研究から「Mori–Zwanzig射影演算子法及び iterative Boltzmann inversion法に基づく非マルコフ粗視化モデルの構築」(吉本)

(もう少し適切な日本語の紹介記事がないか継続して探してみる)

メモリカーネル

線形非平衡統計力学の一般論に基づき、粗視化・自由度削減した運動方程式として次式のような一般化Langevin 方程式[6,7] が採用されることが多い。

$$ \frac{\text{d}Q_{j}(t)}{\text{d}y}=\int_{-∞}^{t} dt'\sum_k K_{jk}(t-t')\times\frac{\partial F(\left\{ Q_{j}(t') \right\})}{\partial Q_{k}(t')}+\xi_{j}(t) $$

ここで、$K_{jk}(t)$ はメモリカーネルと呼ばれる時間遅れをともなった摩擦の効果を表す量、$\xi_{j}(t)$ はランダムな熱ゆらぎによるノイズを表す。右辺第1 項は自由エネルギーを減少させる方向へと自由度を駆動するものであり、自由エネルギーを減少させる力と抵抗力に相当する(散逸と呼ばれる) 。

「ノンマルコフな(non-Markovian)軌道解析法」

分子内の反応(化学反応や構造変化を含む)のレートを計算する場合…パス空間を正しくサンプルするのは諦め,ある限定されたオーダーパラメータ空間(これをどう選ぶかに関しては後で触れる)でのダイナミクスを記述することを考える.まず,その空間をボロノイ分割などを使って適当に区切り2,区切られた区間内を「ミクロな状態」と考える.そのミクロな状態間の遷移を素過程と考え,それをつなげることである状態AからBまでのレートを算出するわけである.この考え自体はMSMと同じであるが,マルコフ性を仮定しないので,よりflexibleなスキームとなりうる.この手法のことを便宜的に,ノンマルコフな軌道解析法(non-Markoviantrajectory analysis)と呼ぶ。(分子系における遷移・反応レートの計算法についてIII(藤崎) )

※マルコフ性(マルコフせい、英: Markov property)とは…その過程の将来状態の条件付き確率分布が、現在状態のみに依存し、過去のいかなる状態にも依存しない特性を持つことをいう。…マルコフ性のある確率過程をマルコフ過程と呼ぶ。 (マルコフ性 )

qMSMアルゴリズム

(再度読み直す必要がある) 図1;qMSMの実装。メモリカーネルの計算と長時間スケールダイナミクスの予測の2つのステップで構成されています。…MDシミュレーションで計算されるため、TPM自体のダイナミクスからメモリカーネルを計算する簡単な方法を示します。

(たぶん続く)