概要
- トゥアタラはマオリ文化において特別な場所の守護者であるとされています2(本研究はマオリ族のiwi(部族)であるNgātiwaiと協力して、そのゲノムのシーケンスを行いました)
- トゥアタラは、生息地の喪失、捕食、病気、地球温暖化などの要因により、絶滅の危機に瀕している種とされています2。
- トゥアタラは、形態学的および生理学的なさまざまな生物種の特徴を併せ持っており、また温度依存性の性別変化、非常に低い基礎代謝率、かなりの寿命といった爬虫類としては独特の形態があります2。
- 分類学的位置は発見以来確定しなかった2ものの、分子的アプローチがこの分類のために試みられている4が、有蹄動物(トカゲとヘビ)を形成する系統からのトゥアタラの分割のタイミング、トゥアタラの進化の速度、およびトゥアタラの種の数は、現在も議論の余地がある2。
トゥアタラの分類学的特徴が特徴的であるように遺伝子に複数の他の動物には見られない特徴がありました。今回、WGSをもとに以下の特徴を説明できる遺伝的候補が報告されます。(詳細は本文にて確認のこと。)
- 免疫(MHC)
- 視覚オプシン関連
- 熱調節(TRPV;熱感受性たんぱく質)
- セレン代謝
- 匂いの受容
Memo
Newcombはゲノム情報をもとにした研究、その中でも嗅覚受容体の研究を精力的に報告している。古代生物についての研究もあり、個人的に関心を持っている。
今回、統計的なサンプルサイズの事前決定はされておらず、実験は無作為化されていない。リファレンスゲノムということではなさそう。希少種なので仕方がないような気がする。
事前知識
tuatara, Sphenodon punctatus ; ムカシトカゲは、ニュージーランドの限られた地域に生息する、原始的な形質を残した爬虫類。現地での呼称からトゥアタラ(tuatara)と呼ばれることもある。... トカゲと名付けられてはいるが、狭義のトカゲ(有鱗目トカゲ亜目)とは全く異なる系統の爬虫類であることが、骨格とくに頭蓋などの比較により結論付けられている。ムカシトカゲはSphenodon (スフェノドン)属の総称であり、現生のムカシトカゲ目にはSphenodon 属1属しか存在しない。彼らはかつて数多くの種と幅広い生態的地位を占める一大グループだったムカシトカゲ目(または喙頭目)の唯一の生き残りであり、1895年以来絶滅危惧種とされている。*
ムカシトカゲ目 (ムカシトカゲもく:Sphenodontia)は爬虫綱の目の一つであり、現生種はムカシトカゲ属1属2種のみからなる。現生爬虫類の4つの目の中では最小のグループである。ムカシトカゲが属していた目はかつては喙頭目(かいとうもく:Rhynchocephalia)と呼ばれていた。しかし、ムカシトカゲ目は喙頭目の異名というわけではなく、むしろ別のものである。*
一般向け紹介文「3つ目の動物!?ニュージーランド『ムカシトカゲ』の、信じられない10の特徴*」
De novo シーケンスとはアライメント用のリファレンスシーケンスがない場合に新規ゲノムをシーケンスすることを指します。*
竜弓類(りゅうきゅうるい、Sauropsida )は四肢動物有羊膜類の分類群の一つ。蜥形類とも。有羊膜類の二大グループの一方で、哺乳類よりもワニやトカゲに近縁な生物の総称。他にカメ、恐竜、鳥類、ヘビなどを含む。*
syntenyは、個人または種内の同じ染色体上の遺伝子座の物理的な共存を示します。*
類似の生物間のゲノム配列を比較するアルゴリズム、実装、ビルド済みのwebサーバーもあり、ゲノム比較を行うことができる。例Cinteny*
今回の実験内容
- Genome, transcriptome and epigenome (de novoアセンブリによる全ゲノムシーケンスの獲得, 血液由来のトータルRNA, メチル化のグローバルパターン)
- Repeat and gene annotation
- Gene tree reconstructions and substitution rate estimation
- Orthologue calling
- Divergence times and tests of punctuated evolution (CIPRES Science Gateway, BEAST v.2.4.8で系統推定)
- Analysis of "genomic innovations" (免疫、視覚、嗅覚、体温調節、寿命、性別の決定に関連する遺伝子のゲノム構成と配列進化を調査)
- Population genomics ; "Demographic history" (個体統計学の歴史の推測, 性表現型に関連する遺伝子座の調査および遺伝的負荷の推定)
トゥアタラOR
このうち嗅覚には関心があるので抜粋する。
- トゥアタラには472のOR
- ORのうち341の配列はインタクトとみられます(補足情報11)
- 竜弓類(りゅうきゅうるい、Sauropsida )とはニオイ受容体遺伝子の数と多様性が大きく異なります。
- 鳥類と同様の匂い受容体がいくつかあります。
- インタクトOR遺伝子の割合が高いこと(85%)は、嗅覚への強い依存を反映していて、ORのレパートリーを維持する進化圧力が考えられます(拡張データ図7)
(ここまで)