Estimation of binding free energies with Monte Carlo atomistic simulations and enhanced sampling, JF Gilabert Navarro – 2020(博士論文) -3

UPCommons. Global access to UPC knowledge

「1.3.2タンパク質-リガンド結合」のまとめ

相互作用モデルの歴史

タンパク質-リガンド相互作用発生によりタンパク質の機能が実現している。

  • 剛性の仮定
  • ロックアンドキーモデル(Fischer、1894)
  • 誘導適合(Koshland、1958)
  • 立体配座選択モデル(Frauenfelder et al.、1991; Tsai et al.、1999)暫定的な複合体が形成され、タンパク質構造(およびリガンド)の変化が誘発
  • コンフォメーションセレクション ; ポピュレーションセレクション、ゆらぎフィット、選択フィット

解離定数、結合エネルギー

解離定数はタンパク質-リガンド相互作用の強さを表す。標準の結合自由エネルギーの定義が異なるため、異なる結合自由エネルギーを比較するために必要です。

  • エネルギーは、3種類の分子の濃度とは無関係(General、2010)。
  • エネルギーの関係のより詳細な扱い → ZhouとGilsonによるレビューがある(Gilson and Zhou、2007)
  • 結合自由エネルギーを視覚的に示す(図1.3a)、反応の自由エネルギープロファイルから得られます。自由エネルギープロファイルとは反応座標に沿った自由エネルギー値のプロットです。

触媒反応における反応座標を変数とするエネルギーダイアグラム。

なお、「反応座標は、反応経路に沿った反応進行度を表す抽象的な1次元座標のこと*

反応や自由エネルギープロファイルの詳細

タンパク質とリガンドの結合のダイナミクスを検討するには、複雑な自由エネルギーランドスケープ(FEL、図1.3b)を考察する。Nをシステムの原子数として、FELの完全な次元は3^Nのオーダー。多くの座標が分子内結合でリンクしていることを考えると、実際の次元数は3^N未満。準安定状態(FEL内の多数の浅い盆地)の存在は、分子シミュレーションの準安定トラッピングとなり検討を複雑化・難題化させている。このFEL概念を反映させて拡張サンプリング法の設計が発達した。

「1.3.2タンパク質-リガンド結合」に関するメモ 1

"Energy" Surfaceと反応速度論

コンフォメーション変化、フォールディング、ホストゲスト会合における準安定状態及び遷移状態は、反応速度論として記述できる。

「結合自由エネルギーの視覚的な理解は、反応の自由エネルギープロファイルから得られます(図1.3a)。自由エネルギープロファイルは、反応座標に沿った自由エネルギー値をプロットします。」反応速度論についての考察についての疑問点がある。

コンフォメーションから得られるのは純粋には内部エネルギーのみ。伝統的に反応経路はΔGのカーブとして記載されており、分光や計算化学による反応座標と連動するものとしての説明がなされてきたが、孤立状態でのΔGとΔUが系の必然から一致しているだけなのではないか?グローバルコンフォメーションとして準安定状態があるとき、ローカルな高速な互変異性や局所平衡、溶媒との会合はほぼ平衡状態に達していると考えられる。このような高速な局所的なマルチコンフォメーションを平衡安定化や溶媒和として内部エネルギー的に評価しているのであればその実態はΔGと考えられる。

「複雑な自由エネルギーランドスケープ(FEL、図1.3b)での検討。Nをシステムの原子数として、FELの完全な次元は3^Nのオーダー。多くの座標が分子内結合でリンクしていることを考えると、実際の次元数は3^N未満。」と言及されているが、粗視化による自由度の削減を行うことで、「FEL」を考慮する際の実際の次元数を減らすことができる(各種の"拡張サンプリング法"と同じと理解)。

十分高速な平衡状態を一塊と考えてハンドリングするものの実態は(理想的にコーディングされ実装されているのだとすれば)、弱い相互作用によって高次構造が保持されていることと一致しており、粗視化MDとしてハンドリングするものと一致するはずと考える。

(多分続く)