Characterizing human odorant signals: insights from insect semiochemistry and in silico modellingPhil., Ashish Radadiya, John A. Pickett, 2020, Trans. R. Soc. B37520190263http://doi.org/10.1098/rstb.2019.0263

https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rstb.2019.0263#d3e340

Memo

生物における化学物質を介したコミュニケーション「セミオケミストリー」は1980年代から存在する概念。今回紹介する論文は総説的な論文。近年の技術の進展を中心に分野を俯瞰し、現状の研究環境について見直す。

本文についても確認をしてみる。(途中まで読んだのでその内容をまとめてみる)

(個人的に注目していたことは) 昆虫の嗅覚受容体のCryo-EMは昆虫の嗅覚受容体が4量体構造である論拠になっている。これを元にMD等を合わせて考察することで香気分子に対する選択性を評価できる可能性がある。昆虫の嗅覚受容体についての研究土壌は大きく前進した。

用語

  1. 化学コミュニケーション=chemical communication : 「ホルモンやフェロモンのように、化学物質を介して行われる情報交換。」
  2. semio-chemical : セミオケミカル、「情報化学物質(英語:Semiochemical、もしくは信号物質)とは、情報のやり取りに使われる化学物質および混合物の事である[1]。この情報のやり取りは、同種間と異種間の大きく2種類に分けられる[2]。化学生態学の分野で、フェロモン、アロモン、カイロモン、防虫剤、誘引剤の意味で使われる[1]。 」
  3. Semiochemistry : セミオケミストリー、(生体)信号物質の化学

  4. 情報化学物質

  5. 生体機能分子の科学
  6. Mammalian Semiochemistry: The Investigation of Chemical Signals Between Mammals | Albone, Eric S. | Mammals 1984
  7. Semiochemistry--flavors and pheromones: Proceedings Unknown Binding – January 1, 1985

1. Introduction

  • 害虫駆除のメカニズム、受粉などの生態系内イベントの研究など、昆虫のセミオケミストリーに関する研究はヒトのセミオケミストリーよりも注目されています。
  • 脊椎動物、特に哺乳類、おそらくヒトにも、中枢神経系に高度に進化した信号物質によるがあると考えられ、昆虫セミオケミストリーは、ヒトや他の脊椎動物のセミオケミストリーの発見にヒントとなる。
  • セミオケミカルの研究の最初のステップは、生物学的に活性な化合物サンプルの取得であり、昆虫の場合、外分泌系から得られることが多いです。
  • これまでに昆虫では、表皮や排泄の場所に表在する細菌でセミオケミストリーが報告されています。Andreas NatschとRoger Emterによる論文[1]でヒトの共生細菌による必須前駆体の変換からの強い影響を与えるヒトのセミオケミカルの生成について説明してます。ヒトでも、細菌や他の寄生虫に関連するセミオケミカルが疾患に関する非侵襲性のマーカーとなる可能性があり、関心が集まっています。

  • 昆虫では、交配または寄生宿主の場所、シグナル伝達プロセスに生態学的に関連する状況などで、個々の昆虫種のフェロモンの特定のセミオケミカル組成が知られています(特定の種内変動がある可能性があります)。
    ヒトや他の哺乳類は、個人を区別する特定のフェロモンとして働くセミオケミカルが知られています。

  • 昆虫の場合、微小電極を用いた触角電気生理学的手法により嗅覚器官の直接観測が可能(EAG)、セミオケミカル混合物のクロマトグラフィーで分離された成分を直接検出できる。生物学的に活性な化合物を早期に特定でき、行動テストのために個々の成分を特定しやすい。
    ショウジョウバエの場合、遺伝的に改変することも可能であり、化合物と受容体のキャラクタリゼーションに加えて、昆虫のセミオケミストリーの行動学的調査ができる。
  • 将来的にヒトでも、遺伝学的手法による分子認識の発現系を用いたセミオケミストリー研究が実現する可能性があります。
  • ヒト由来のセミオケミカルを検出する吸血性のハエの研究例など、昆虫のシステムを利用したヒト~昆虫間のセミオケミストリーの研究が進んでいます
  • 昆虫の、生態系に存在するセミオケミカルの特異性をもとにしたアゴニスト・アンタゴニスト設計は、薬物や農薬の発見よりも困難です(いくつかは合成生物学的手法によって実現されています)。
  • 分子設計への新しい理論的アプローチも今後期待される。

(続く)